― 子どもたちに伝えたかった「からだの中の回復する力」―
『ぼくのからだのなかにヒーローがいた! げんきをつくるちいさなヒーローのおはなし』は、三恵社から出版されている
武本重毅(ミトコンドリアマン)によるミトコンドリアをテーマにした科学・健康絵本です。
私はこれまで医師として、病気になった方々を診療してきました。
そして研究者として、免疫、代謝、老化、そしてミトコンドリアについて考えてきました。
その中で、ずっと感じてきたことがあります。
それは、
「身体のことを知るのは、病気になってからでなくてもいい」
ということです。
むしろ子どもの頃から、
自分の身体の中では、毎日たくさんの小さな存在が、自分を元気にするために働いている。
そんなことを知ってもらえたら、自分の身体を少し大切にしたくなるのではないでしょうか。
その思いから生まれたのが、この絵本です。
物語の主人公は、
「さいきんつかれていて、どうもげんきがでない」
と感じている男の子。
でも、私たちの身体の中には、目には見えないほど小さな世界があります。
その細胞の中で、私たちが動いたり、考えたり、遊んだり、生きていくためのエネルギーを支えている存在の一つが、
ミトコンドリアです。
ミトコンドリアは、しばしば
「細胞の発電所」
と説明されます。
けれども、私はミトコンドリアを単なる発電所としてだけ捉えているわけではありません。
エネルギーをつくることに加えて、細胞が環境の変化に適応し、ストレスに応答し、生命活動を維持していくうえでも重要な存在です。
そこで、この少し難しいミトコンドリアの世界を、子どもたちにも感じてもらえるように、
「からだの中の小さなヒーロー」
として物語にしました。
元気は、外からもらうだけではない
この絵本を通して、本当に伝えたかったことがあります。
それは、
「元気は、外から与えてもらうだけのものではない」
ということです。
よく眠ること。
身体を動かすこと。
きちんと食べること。
休むこと。
そして、自分の身体を大切にすること。
そうした毎日の生活の中で、私たちの身体は自分自身を整えようとしています。
私は今、この生命の働きを医学的にもっと大きな視点から、
Recovery Capacity ― 回復力
という言葉で考えています。
傷ついても修復する。
疲れても休んで戻る。
環境が変わっても適応する。
そして、もう一度動き出す。
人間の身体には、本来そうした力があります。
この絵本は、難しい医学用語を使わずに、そのことを子どもたちへ伝える最初の入り口でもあります。
ミトコンドリアから始まった物語
大人向けの著書
『ミトコンドリアから読み解く老化と再生』では、老化とミトコンドリアについて書きました。
そして、この絵本では同じミトコンドリアを、
「自分の中にいるヒーロー」
として子どもたちに伝えました。
対象年齢も、言葉も、表現方法もまったく違います。
けれど、根底にある問いは同じです。
人間の身体は、どうやって元気をつくり、どうやって自分自身を整え、回復しているのだろう。
医学を大人だけのものにしない。
生命の仕組みを、子どもたちにもワクワクしながら知ってもらう。
そして、
「自分の身体って、すごいんだ」
と思ってもらう。
それが、この絵本をつくった理由です。
親子で「からだ」について話すきっかけに
今回、「親子で読みたいブックリスト2026」に選んでいただいたことを、私はとても嬉しく感じています。
この本は、子どもだけで読んで終わる絵本ではありません。
「ミトコンドリアって何?」
「どうして眠ると元気になるの?」
「ごはんを食べると、どうして動けるの?」
そんな子どもたちの素朴な疑問から、親子で身体について話す時間が生まれれば、それこそがこの本のもう一つの役割だと思っています。
イラストを担当してくださった澤井薫さん、出版に携わってくださった三恵社の皆さま、そして今回ご紹介くださった関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
最後に、この絵本に込めた思いを一言で表すなら、
君の中には、君を支えている小さなヒーローがいる。
そして、そのヒーローたちは今日も、私たちが生き、動き、そしてもう一度元気になるために働いています。
The hero is already inside you.
MITO RISING
Hope is Recovery.
親子で読みたいブックリスト2026分冊版
親子で身体について話すきっかけとして、手に取っていただければ嬉しいです。