医療費を減らすには、「削る」よりも大切なことがあります

― 不可逆支出という新しい視点 ―

最近、日本では物価の上昇が続き、エネルギー価格や食料価格の高騰、世界各地での紛争など、私たちの暮らしに大きな影響を与える出来事が続いています。

その一方で、日本では高齢化が進み、医療費や介護費も年々増え続けています。

「どうすれば医療費を減らせるのか?」

これは国全体にとって、とても重要な課題です。

しかし、私たちは少し視点を変える必要があるのではないでしょうか。


医療費には「戻せる支出」と「戻せない支出」があります

例えば風邪や軽いけがで病院へかかる医療費は、多くの場合、一時的な支出です。

回復すれば医療費は終わります。

ところが、

脳卒中による後遺症

認知症

要介護状態

慢性心不全

慢性腎不全

などでは事情が違います。

一度その状態になると、

医療だけでなく介護も必要になり、

その支出は何年、あるいは何十年にもわたって続くことがあります。

私は、このような支出を

「不可逆支出(Irreversible Expenditure)」

と考えています。


問題は医療費の額ではありません

よくニュースでは、

「医療費が増えた」

という数字だけが取り上げられます。

しかし本当に重要なのは、

支出が固定化してしまうこと

です。

たとえば、

70歳で要介護状態になる人と、

80歳まで元気に過ごせる人では、

医療費や介護費に大きな差が生まれます。

つまり、

支出の大きさだけでなく、

いつ不可逆な状態へ入るのか

が、とても重要なのです。


老化は、ある日突然起こるわけではありません

多くの病気や老化は、

ある日突然始まるものではありません。

少しずつ、

体の回復力が低下し、

やがて元に戻れない状態へ移行していきます。

この「戻れる時期」を逃さず介入できれば、

将来必要になる医療や介護を減らせる可能性があります。


予防は「医療費削減」ではなく「未来への投資」

ここで誤解してほしくないことがあります。

私は、

高度医療や介護を減らすべきだ

と言いたいのではありません。

高度医療も介護も、

必要な方には欠かせない大切な医療です。

本当に大切なのは、

そこまで進行してしまう人を、一人でも減らすこと

です。

つまり、

予防や健康づくりは、

医療費を削るためではなく、

将来の大きな支出を防ぐための

社会への投資

なのです。


Recovery Medicineという考え方

私は、

これからの医療は、

「病気を治す医療」だけではなく、

「回復力を守る医療」

へ進化していくと考えています。

睡眠

運動

食事

ストレス管理

ミトコンドリアの働きを支えること

こうした取り組みは、

単なる健康法ではありません。

体が元に戻れる力(Recovery Capacity)

を守る医療です。


未来の医療は「いつ介入するか」

これからの時代に重要なのは、

「どこまで治療するか」

ではなく、

「いつ介入するか」

という視点です。

回復できる段階で支えることができれば、

本人の健康寿命を延ばすだけでなく、

社会全体の医療・介護負担を軽くすることにもつながります。


MITO RISING Perspective

医療費を減らすことが目的ではありません。

回復できる時間を延ばすこと。

それが結果として、
健康寿命を延ばし、
将来の医療・介護費を減らすことにつながります。

未来の医療とは、
「どれだけ治療するか」ではなく、
「いつ回復を支えるか」を考える医療です。