生命は「光」だけで始まったのではない

深海で見つかった、もう一つの生命エネルギー

私たちは学校で、

植物は太陽の光を使って生きている――

つまり「光合成」を学びます。

では、

太陽の光がまったく届かない深海では、

生命は何をエネルギーにして生きているのでしょうか。

この疑問に、新しい答えを示した研究が発表されました。


深海には「天然の電池」がある

深海の熱水噴出孔では、

地下から

  • 水素
  • 硫化水素

などを多く含む熱水が噴き出しています。

一方、その周囲には酸素を含む冷たい海水があります。

この二つが接する場所では、

自然に電子が移動し、

電気(電位差)が生まれます。

研究者たちは、この現象を

地球がつくる天然の電池

と考えています。


微生物は「電気」を利用して生きていた

今回の研究では、

深海熱水噴出孔付近から採取した微生物を、

有機物を一切加えず、

  • 電気
  • 二酸化炭素(CO₂)

だけがある環境で培養しました。

すると、

微生物は電気をエネルギーとして利用し、CO₂から有機物を作りながら増殖したのです。

これは、

光の代わりに電気を利用する

「電気合成(Electrosynthesis)」

という生命活動です。


本当にCO₂から細胞を作っていた

研究チームは、

特殊な同位体(¹³C)で目印を付けたCO₂を用いて、

その炭素が本当に細胞の中へ取り込まれるかを調べました。

その結果、

電気を利用して増殖した細菌の細胞内に、

¹³CO₂が取り込まれていることが確認されました。

つまり、

この細菌は

電気を利用してCO₂から自らの体を作っていた

ことが証明されたのです。


水素や硫化水素の本当の役割

この研究で私たちが最も注目したのは、

「水素が生命を支えた」

ということではありません。

本当に重要なのは、

水素や硫化水素は電子を供給する役割を担っている

という点です。

生命が利用している本質は、

電子の流れなのです。

水素や硫化水素は、

その電子を運ぶ重要な媒体と言えるでしょう。


私たちが注目したポイント

今回の研究は、

生命のエネルギー源についての考え方を広げてくれます。

私たちはエネルギーというと、

ATPを思い浮かべます。

しかし、

ATPが作られる前には、

まず電子が流れています。

つまり、

生命の出発点には、

電子の流れ

があるのです。


MITO RISINGとの接点

MITO RISINGでは、

ミトコンドリアを

「細胞の発電所」

ではなく、

生命システム全体を支える制御ノード

として考えています。

ミトコンドリアも、

電子伝達系によって電子を流し、

そのエネルギーを利用してATPを作っています。

今回の研究は、

40億年前の深海で生命を支えた電子の流れと、

現在の私たちの細胞で働くミトコンドリアの電子伝達系が、

同じ生命の原理で結ばれている可能性を示しています。


未来の医療へ

これまで、

ミトコンドリア研究は

「ATPを増やすこと」

に注目してきました。

しかし、

生命をもっと深く見つめると、

本当に重要なのは

電子が正しく流れること

なのかもしれません。

今回の研究は、

生命の起源を理解するだけでなく、

老化、回復力、そしてミトコンドリア医療を考える上でも、

非常に重要な発見と言えるでしょう。


MITO RISING Perspective

Life did not begin with ATP.

Life began with the flow of electrons.

生命はATPから始まったのではない。

生命は、電子の流れから始まった。