「回復力」を決めているものは何か?
前回は、Recovery Capacityを「今どんな状態か」だけではなく、ストレスや病気のあとに、どう戻ってくるかを見る概念として考えました。では、その「戻る力」は何によって決まるのでしょうか。
ミトコンドリアでしょうか。免疫でしょうか。炎症でしょうか。睡眠でしょうか。代謝でしょうか。
私は今、その答えは、「一つではない」と考えています。
たとえば肺炎なら、病気が起きている場所は「肺」です。しかし、回復しているのは肺だけではありません。免疫細胞が病原体に反応し、骨髄が新しい免疫細胞をつくり、血管が酸素や栄養を運び、心臓が血液を送り出す。肝臓は代謝や炎症を調節し、筋肉は活動を支え、脳と自律神経は全身を調整する。そして、それぞれの細胞でミトコンドリアがエネルギーや代謝、ストレス応答を支えています。
つまり、
回復とは、一つの臓器の仕事ではない。
身体全体が協調して初めて成立する生命現象です。
私はこれを、
Recovery is a systems property.
と考えています。

回復力は、一つの物質でも、一つの臓器でも、一つの遺伝子でも、一つのサプリメントでもない。複数のシステムが相互作用することで現れてくる、生命システム全体の性質ではないか。
だから身体を見るときも、少し視点を変える必要があります。
従来の医学では、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓というように、臓器ごとに詳しく診ます。それは診断や治療に不可欠です。
しかしRecovery Capacityという視点では、「臓器」だけではなく、「臓器間のつながり」を診る。
私はこのつながりを、
Recovery Network
と呼んで考えています。
MITO RISINGという名前から、「では、ミトコンドリアがすべての中心なのですか?」と思われるかもしれません。
でも、私はそうは考えていません。
ミトコンドリアは非常に重要です。しかし、ミトコンドリアだけで生命は回復できない。免疫、血流、リンパ、睡眠、筋肉などがそれぞれ働き、互いにつながって初めて回復が成立します。
だから重要なのは、
Mitochondria alone
ではなく、
Mitochondria within the Recovery Network.
ミトコンドリアを、生命全体のネットワークの中で考える。これが現在のMITO RISINGの考え方です。
そして、回復にはもう一つ大切なことがあります。
「順序」です。
感染が起きれば、まず反応する必要があります。しかし炎症が永遠に続けばいいわけではない。病原体や損傷に対応したあとは、不要なものを処理し、組織を修復し、炎症を終息させ、再び恒常性へ向かう必要があります。
Detection → Response → Clearance → Repair → Resolution → Homeostasis
重要なのは、すべてを強くすることではありません。
必要な反応が、必要なときに起こり、必要なときに終わること。
そこに回復の本質の一つがあるのではないでしょうか。
この視点に立つと、老化の見え方も変わります。
老化すると、ミトコンドリアだけが変わるわけではありません。免疫も、炎症制御も、血管も、筋肉も、睡眠も、代謝も変わる。そして、それらを結ぶ情報交換や協調性も変化していく。
すると、一つひとつの臓器はまだ働いていても、
身体全体として「元へ戻る」ことが難しくなる。
私は、ここにRecovery Capacity低下の重要な側面があるのではないかと考えています。
だから、「これ一つで若返る」という一つの物質だけを探す発想では、生命の回復を十分に説明できません。
Recovery Capacity is an emergent property of a network.
One molecule → One target
だけではなく、
Network → Coordination → Recovery
へ。
そして、そのさらに先には、
Recovery is the restoration of self-organization.
回復とは、生命がもう一度、自ら秩序をつくり直していくことなのではないか。
私は、そんな生命観を考えています。
MITO RISING|The Age of Recovery
次回は、
04|RESTORATION
「回復力」は取り戻せるのか?
「老化だから仕方がない」ではなく、変えられる部分はどこにあるのか。
睡眠、運動、栄養、概日リズム、ストレス適応、そしてミトコンドリアの品質管理へと進みます。
https://www.wani.co.jp/event.php?id=9128

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