THE AGE OF RECOVERY:03|NETWORK

「回復力」を決めているものは何か?

前回は、Recovery Capacityを「今どんな状態か」だけではなく、ストレスや病気のあとに、どう戻ってくるかを見る概念として考えました。では、その「戻る力」は何によって決まるのでしょうか。

ミトコンドリアでしょうか。免疫でしょうか。炎症でしょうか。睡眠でしょうか。代謝でしょうか。

私は今、その答えは、「一つではない」と考えています。

たとえば肺炎なら、病気が起きている場所は「肺」です。しかし、回復しているのは肺だけではありません。免疫細胞が病原体に反応し、骨髄が新しい免疫細胞をつくり、血管が酸素や栄養を運び、心臓が血液を送り出す。肝臓は代謝や炎症を調節し、筋肉は活動を支え、脳と自律神経は全身を調整する。そして、それぞれの細胞でミトコンドリアがエネルギーや代謝、ストレス応答を支えています。

つまり、

回復とは、一つの臓器の仕事ではない。

身体全体が協調して初めて成立する生命現象です。

私はこれを、

Recovery is a systems property.

と考えています。

回復力は、一つの物質でも、一つの臓器でも、一つの遺伝子でも、一つのサプリメントでもない。複数のシステムが相互作用することで現れてくる、生命システム全体の性質ではないか。

だから身体を見るときも、少し視点を変える必要があります。

従来の医学では、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓というように、臓器ごとに詳しく診ます。それは診断や治療に不可欠です。

しかしRecovery Capacityという視点では、「臓器」だけではなく、「臓器間のつながり」を診る。

私はこのつながりを、

Recovery Network

と呼んで考えています。

MITO RISINGという名前から、「では、ミトコンドリアがすべての中心なのですか?」と思われるかもしれません。

でも、私はそうは考えていません。

ミトコンドリアは非常に重要です。しかし、ミトコンドリアだけで生命は回復できない。免疫、血流、リンパ、睡眠、筋肉などがそれぞれ働き、互いにつながって初めて回復が成立します。

だから重要なのは、

Mitochondria alone

ではなく、

Mitochondria within the Recovery Network.

ミトコンドリアを、生命全体のネットワークの中で考える。これが現在のMITO RISINGの考え方です。

そして、回復にはもう一つ大切なことがあります。

「順序」です。

感染が起きれば、まず反応する必要があります。しかし炎症が永遠に続けばいいわけではない。病原体や損傷に対応したあとは、不要なものを処理し、組織を修復し、炎症を終息させ、再び恒常性へ向かう必要があります。

Detection → Response → Clearance → Repair → Resolution → Homeostasis

重要なのは、すべてを強くすることではありません。

必要な反応が、必要なときに起こり、必要なときに終わること。

そこに回復の本質の一つがあるのではないでしょうか。

この視点に立つと、老化の見え方も変わります。

老化すると、ミトコンドリアだけが変わるわけではありません。免疫も、炎症制御も、血管も、筋肉も、睡眠も、代謝も変わる。そして、それらを結ぶ情報交換や協調性も変化していく。

すると、一つひとつの臓器はまだ働いていても、

身体全体として「元へ戻る」ことが難しくなる。

私は、ここにRecovery Capacity低下の重要な側面があるのではないかと考えています。

だから、「これ一つで若返る」という一つの物質だけを探す発想では、生命の回復を十分に説明できません。

Recovery Capacity is an emergent property of a network.

One molecule → One target

だけではなく、

Network → Coordination → Recovery

へ。

そして、そのさらに先には、

Recovery is the restoration of self-organization.

回復とは、生命がもう一度、自ら秩序をつくり直していくことなのではないか。

私は、そんな生命観を考えています。

MITO RISING|The Age of Recovery

次回は、

04|RESTORATION

「回復力」は取り戻せるのか?

「老化だから仕方がない」ではなく、変えられる部分はどこにあるのか。

睡眠、運動、栄養、概日リズム、ストレス適応、そしてミトコンドリアの品質管理へと進みます。

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